THE INSECT HUNTER
2015
0322
静岡

THE INSECT HUNTER 2015


富士山麓のスギ林る。
  


今年も花粉症の辛い時期となってまいりましたが、皆様お元気でしょうか・・・。


にわかオサ屋の、びおすけです。



あれよあれよと季節は進み、心浮き立つサクラの開花もはじまり、

花粉症で目も鼻もグズグズカユカユになりつつも、

ついに楽しい早春のカミキリ採集シーズンの到来です!


この時期、最も気になる場所はスギ林です。

本来カミキリ屋さん寄りの虫屋である びおすけはいつもなら

スギカミキリやビャクシンカミキリあたりを求めるのが通例なのですが・・・。


今年は、ひとつ心残りがありまして、別の虫をどうしても優先させたい!と思いました。

実は、にわかオサ屋のびおすけとして、今シーズンの目標のひとつであったオサムシがいたのです。

びおすけの心の中ではすでに「UMA(未確認生物)」と認識されている

そのオサムシの名前は・・・


幻の・・・・


フジアキタクロナガオサムシ








4年ほど前にアキタクロナガオサムシの新亜種として記載されたオサムシです。

この、名前を聞いただけでも興味を引かれるオサムシ。

何が面白いかって、そもそも「分布」が風変わりです。

基亜種は日本海側を中心に東北から近畿地方まで分布していますが、

このフジアキタクロナガは、いきなり太平洋側のそれもかなり限られた地域に

飛び地的に分布しているのです。


この分布状況から、びおすけが最初に疑問に思ったのは

「人為的な」仕業による分布ではないか?ということ。

亜種とされているけれど、他の地域のアキタクロナガと区別がつくのかつかないのか?

区別がつくのであれば、どのような特徴を持っているのか?

是非、自分の目で確かめてみたいと思ったわけです。


その地は、かつてあの、清水次郎長親分が開墾した土地だそうで、

その頃からすでにフジアキタクロナガは分布していたのか?

そうであれば、開墾によって隔離が起きた・・・なんてことは考えられませんが・・・、

当時はもっと個体数も多かったのか・・・?!なんて、妄想が脳内を駆け巡ります。


びおすけ、すでに4回挑戦をしていますが、今だにこのフジアキタクロナガは

見たことも無ければ、カスリもしていません。


もう、びおすけの気持ちの中では「幻の虫」となっているのですが、

オサ掘りシーズン最後にもう一度だけ挑戦してみようと思ったのです・・・・。









     
さあ・・・やってきました。

今シーズン最後の挑戦かと思うと、否が応でも

気合が入ります。


今までは、探すのであれば自然度が高い場所が

良かろうと思い、落葉広葉樹とスギなどの植林の

混交林の中を歩き回っていたのですが、成果は

出ませんでした。


ならばっ!目先を変えてみるか!?ってことで、

今度は場所をガラッと変えて、スギ植林の単純林

で探してみることにしたのです。


さて、吉と出るか・・・凶と出るか・・・・。




   
スギ林に足を踏み入れます。


先の方までどこまでいっても見渡す限りスギ林です。

イメージしていたよりも若い林だったようで、あまり

太い木は見られません。


探すのはもちろんスギの倒木、いわゆるフレーク

状態になった朽木です。


オサムシが越冬場所と選ぶのは、太さよりもその

朽ち方の状態だと思うのですが、それでもあまり

細い倒木よりか太い方が入りやすい気がするので

少し心配になってきました。




  
倒れたスギの数はそこそこあるのですが、直径が

せいぜい15〜20cmの細めのばかり。

しかし、他にあてがないので、1本1本見て軽く手鍬

を入れていきます。


以前、別の場所で採集したアキタクロナガ基亜種は

苔むした樹皮のすぐ下にいることが多かったので、

あまり力任せに鍬を入れると危険だと思い、かなり

慎重に探すので気が疲れます。


しばらくして何本目かの朽木からルリヒラタゴミムシ

が出てきました。キラッ!と光る宝石のように見えま

した。この地域は何故かゴミムシすら少なく、何も

出ないことも多いので、普通種のルリヒラタゴミムシ

であっても、超貴重に思えてきます。




  
十何本目かの倒木の樹皮をめくると、ポカリと

あいた穴の中に黒い物体が!!


『キタのか!? ついにキタのか!?』

久々にドキドキする瞬間です。

しかし、鞘翅や前胸背面のつくりによく見知った

ような雰囲気が・・・。


う〜ん・・・・!




   
よ〜く見ると、やはりただのクロナガ系のようです。


しかし、このエリアでクロナガ系を出したのは、実は

初めて。 大きさはわりと小型ですが、場所的にコクロ

ナガではないだろうし、クロナガかオオクロナガが

考えられますが・・・。


♂だったので交尾器も見てみよう・・・。




 
う〜ん・・・。交尾器は微妙でなんとも・・・。



 
   
丘孔点列も微妙でなんとも・・・!

だけど・・・


おそらくただのクロナガオサムシでしょう・・・。



 
 
クロナガオサムシ基亜種

Carabus (Leptocarabus) procerulus CHAUDOIR, 1862



たかがクロナガだけど、このエリアでは初めて見ま

した。

小型で前胸背がかなり細めのタイプです。

たわいもないけど、目標のオサムシに少し近づいた

ような気がするのは何故・・・。




一息ついて、あらためて周りを見渡します。


う〜ん・・・これといって良い倒木物件は無いな〜。

例えあったとしても、このエリアではオサムシは

おろか、ゴミムシすら入ってない事が多いのです。


他の場所なら間違いなくオサムシが越冬している

ような物件でもそのような状態なので、物件が貧弱

だと、全然期待できない気になってきます。


と、文句を言いながらも、手当たり次第に朽木を

ひとつひとつ探すしかありません。




 
さて、探索開始してから2時間が経とうとした頃・・・。


やはり合いも変わらずしょぼい直径15cmくらいの

倒木の樹皮を少しずつ剥がしていた時・・・。


樹皮直下に隙間があり、そこに黒い物体が鎮座して

いるではありませんか!


う〜ん・・・先ほどのこともあるのでまたクロナガだな

と思いつつ、それでもまあまあの成果だな・・・など

と気弱な満足感を味わいながら、つまんで毒ビンに

入れようとした時、よく見ると何か違うような?


 

「ん?」


ただのクロナガにしては、鞘翅の彫刻がはっきりと

しているような・・・?

しかし、アキタクロナガにしては彫刻の「彫り」が浅い

ような・・・!?


スギ植林地の林内では暗くてハッキリと確かめる

ことができないので、採集を中止して、一度林の外に

出て確かめることにしました。




   
スギ植林地から脱出すると、外がとても明るく感じ

られてホッとします。

毒ビンで軽〆した「例のブツ」を取り出してまじまじと

見てみます。

「んんんんんんんん!!?」

「ちがう!クロナガじゃない!こ・・・これは・・・!!」



『キタコレーーー!!』





あまりにも採れなかったものが目の前にあるので、

半信半疑ですが・・・。

どうやら採れてしまったようです・・・・。




   
アキタクロナガオサムシ富士亜種

Carabus (Euleptocarabus) porrecticollis pacificus (IMURA et MATSUNAGA,2011)

通称:フジアキタクロナガオサムシ


見た目のサイズ感は基亜種と変わらないようです。

♀個体だったので、交尾器を出すのは困難だった

ため、外観的な判別しかできませんが、所持して

いる基亜種の標本と比較してみると・・・


@前胸背の色彩は青味がほとんどなく黒っぽい

A前胸背の縁が直線的で全体に菱形形状

B鞘翅の彫刻の彫りが浅く、弱い


といった違いが見られましたが、何せ1頭だけの

比較なのでもっとサンプルの数を見ないと、断言

はできませんが、基亜種との違いは思ったよりも

多い・・・という感じです。

また、岩湧亜種の標本は所持していないので、今回

は比較できませんでした。




   
五度目の挑戦で運よく?ようやく見つけることが

できました。 思ったよりも見かけも個性のある亜種

なので、次の機会には♂をはじめ、複数の個体も

見てみたいと思います。


それにしても、虫の世界は本当に奥が深いですね。

まだまだ知らないことがたくさんあるかと思うと、

なんだかワクワクしてきます!


というわけで、そろそろ びおすけもカミキリ屋さんに

徐々にシフトしていこうかと思います。


今シーズンはどのような出会いがあるか!?

今からとても楽しみです!




   





    
【今回のエリアで見られた他のオサムシ】






ルイスオサムシ基亜種

Carabus (Ohomopterus) lewisianus lewisianus
(NAKANE,1952)


このエリアで最もよく見られたオサムシ

      
マイマイカブリ関東・中部地方亜種

Carabus (Damaster) blaptoides, oxuroides (SCHAUM,1862)

通称:ヒメマイマイカブリ


個人的には富士山南麓側ではよく出会える種類。

ただし、超小型の個体が多い。

このエリアの個体も細い倒木に入っていた小型の

個体でした。




   

■本日の成果

フジアキタクロナガオサムシ 1♀
クロナガオサムシ 1♂
ルリヒラタゴミムシ 1ex.

       
    
END




   
           
 
THE INSECT HUNTER 2015
inserted by FC2 system