THE INSECT HUNTER
2011
0122
栃木

THE INSECT HUNTER 2011

   
RE LOAD OF THE RINGS
リロード オブ・ザ リング 番外編

ホビットふたり旅 〜雪の章〜
  

  
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NULL(ヌル)


何も無い事を表す概念。語源はドイツ語の「0」。

IT用語では、何もデータが含まれていない状態、または長さ「0」の空文字の事だが、

虫屋の間では、狙った獲物が全く採れなかった状態を示す隠語として使われる・・・。
  
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ヌル助 「・・・それにしても、この年末年始にかけて、各地で大雪の被害が大変でしたね」

ヌルド 「・・・そのようだな。しかし、それはそれ、これはこれだ」

ヌル助 「しかも、2月に近いこの時期、雪がないとは思えないのですが・・・?」

ヌルド 「・・・・いや。太平洋側だから積雪はナイはず。私は行くと言ったら行くぞ」

ヌル助 「旦那様・・・。 あいかわらず頑固なお方だなぁ〜。一度言いだしたら聞かないんだから・・・」

ヌルド 「明日、早朝に出発するからな」

ヌル助 「では、わかりました。もうお止めしませんので、どうかお気をつけて行ってらしてください」

ヌルド 「・・・・何を他人事のように言っておる? おまえも行くのだ」

ヌル助 「は・・・はいっ!?」

ヌルド 「今夜中に支度をしておきなさい」

ヌル助 「ちょ・・・ちょっと待ってください!旦那様! 私は寒いのと冷たいのは苦手でして・・・」

ヌルド 「だから、雪・は・無・い、と言っておろうがっ!」

ヌル助 「・・・(ブツブツ・・・)て言うか、この時期に、雪がねぇ〜わけねぇ〜し・・・」

ヌルド 「何をブツブツ言っているのだ。万が一、雪があったとしても、歩きまわれば体も温まる!たぶん大丈夫!!」

ヌル助 「たぶん・・・て、旦那様・・・。我らホビット族、今は冬眠の季節!外を出歩くなんて・・・私は留守番をしてま・・・」

ヌルド 「ふっふっふっ・・・待ってろよ!オレンジ色の憎いやつ!!必ず手中に収めてやる!フハハハハハハッ!!!」

ヌル助 「・・・・・・・聞いてねぇし! しかも古っ!!」
   


   


  

   
結局、ヌルドの旦那と一緒に行く事になってしまった

可哀そうな肉食系ホビット族のヌル助。

ヌルドの旦那を全く信用していないヌル助は、車に

タイヤチェーンや長靴を積みこむ事にした。なんで

この寒い中、虫採りに行かなきゃならんのだ!?


そんなヌル助の心を癒してくれるのが、この時期に

期間限定で売られる「チョコレート系スパークリング

飲料」である。バレンタインチョコとはあまり縁の無い

ヌル助のような者を幸せな気分に導いてくれるのだ!

しかし、摂取カロリーが半端でないため、飲みすぎる

と、あるお方からこっぴどく叱られるのでほどほどに

セーブしているのであった。




  
まだ暗いうちにホビット庄を出発して、北関東目指し

車を走らせる。

東北自動車道を安全速度で流していると夜が明け

はじめた。冬の夜明けには独特の清々しさがある。


途中、朝食で朝ラーメンを食べようと思ったが、ある

お方にバレると、ド叱られてしまうので普通の朝定食

みたいのにしておいた。朝食の選定にその日の勝敗

のジンクスを感じているヌル助としては、せめて牛丼

くらいは食べておきたいところなのだが・・・。




   
一足先に待ち合わせ場所に到着していたヌル助の

ケータイが鳴った。他でもないヌルドからであった。


ヌルド 「おはよう、ヌル助。調子はどうかね?」

ヌル助 「おはようございます。で、旦那様は今どちら
      にいらっしゃいます?」

ヌルド 「うむ。実はな、寝坊して今起きたのだ」

ヌル助 「え・・・ええええっー!うそでしょ!?(汗」

ヌルド 「プププッ・・・。うそだよ〜ん」

ヌル助 「・・・・・(怒 」


実はヌルドも到着していたので、そこからはヌルドの

先導で目的地まで走る事になった。 それにしても、

こんな、おちゃめな一面を持つ旦那なのであった・・。




   
さて、高速を降りてすぐに嫌な予感は的中した・・・。

さすがに幹線道路には雪はないが、その周辺には

真白い雪景色が広がっているのであった。

・・・それは、もう見事なまでに・・・。


ヌル助 「おーい土が見えないよー旦那様ー」


ヌルドはそれでもおかまいなく先を走っていく。

一体どうするつもりなのかと、ヌル助はドキドキしな

がら車の後をつけて行った。

道はどんどん狭くなって行く・・・。凍結もありそうだ。

すると、ヌルドが突然車を道路脇に寄せて止まった。

どうしたのかと待っていると、車のドアを開けて少し

青い顔をしたヌルドが降りてきた。

ヌル助も車から降りて、周りの景色を眺めた。




   
ヌルド 「・・・・はぁ〜(ため息」

ヌル助 「・・・・・・・」

ヌルド 「・・・・・だな・・・」

ヌル助 「はいっ?声が小さくて聞こえませんが?」

ヌルド 「・・・・・ユキだな」

ヌル助 「ええ、ご覧の通り見事なまでの銀世界で」

ヌルド 「・・・・・この先行くのは無理だな」

ヌル助 「私は一応チェーン持ってきましたよ」

ヌルド 「私の車は車高が低いのでチェーンを使えな
     いのだ・・・」

ヌル助 「ああ、じゃあ、スタッドレスタイヤを履いてる
      んですね?」

ヌルド 「・・・ううん・・・ノーマルタイヤ履いてるの・・・」

ヌル助 「・・・・・・・・」

ヌルド 「・・・・・・・・・」

ヌル助 「・・・・じゃ〜だめじゃん」

ヌルド 「・・・・うん・・・。・・・・戻ろうか?」


こんな「うっかり八兵衛」なヌルドの旦那が、なぜか

憎めないヌル助なのであった・・・。




   
目的地としていた林道まではとてもたどりつけない

事が判明したので、引き返して平地で採集できそう

な場所を探すことにした。しかし、何の情報もなく

来てしまった二人には、どこをどう探せばよいのか

も見当がつかない。とりあえず林がありそうな場所

を求めて車を走らせて、何となくそれっぽいような、

それっぽくないようなよくわからない場所に到着した。



いずれにせよ、地面を雪が覆っているのはどこも

変わらないようなので、きっとどこを探しても同じな

んだろう・・・・あはははは・・・・などと、もうすっかり

テンションがMAX下がってる二人なのであった・・・。




   
とは言え、はるばるホビット庄からここまで来たので

そのまま黙って帰るわけにもいかず、仕方ないので

車を置いて、それこそまさにとぼとぼと歩きはじめた。


林内の雪は運が良いことに(?)、もう溶けはじめの

ようであまり深くはないが、それでも普通の靴では

とても歩けないような状態である。そこで長靴を履い

て行くのだが、今度は所々にあるアイスバーンに足

をとられてツルツルと滑りながら歩かねばならない。


ヌル助 「旦那様〜寒いよぉ〜冷たいよぉ〜 ; ; 」

ヌルド 「あまり泣くな。こっちも泣きたくなってくる」

ヌル助 「・・・・・・もう帰りたい・・・・・・」




   
しばらく前から歩いて気付き始めたが、このあたり

は文字通り「平地」でちょっとした崖はおろか、段差

すら見つからない。全くもって平和で平坦な土地だ。


たまに見られる「法面?」を削ってみるが、土質は

三寸程度の石が混ざったふかふかで全く締りがない

もの。南関東であればまず見向きもしない、典型的

なオサムシがいないシチュエーションの土である。


ますます二人はテンションが下がり、ほとんど会話

もなくなった頃、ちょっと自然度の高そうな林を見つ

けたので、少し気を取り直して入ってみる事にした。




     
林内を見渡しても相変わらず雪はあるし、平坦なの

で段差が見つからず、掘るに掘れない。


ただ、林内には結構な数の立ち枯れや倒木が目に

つく。ここは朽木狙いで探すしかないだろう。


お目当てのオレンジ色の憎いやつは難しいかもしれ

ないが、クロナガオサムシ系か、もしかしたらマイマ

イカブリとかがいるかもしれない。




   
林内に入って早々に目についたしょぼい立ち枯れ。

ただ、何となく雰囲気だけは感じ取る事ができた。


とりあえず、ナタを入れてみよう。




   
ヌル助 「とぉおおおー!!」 




ナタを振り下ろすと、一撃でぽっかりと穴が開いた。

中を見ると、見覚えのある黒い背中が見えた!





ヌル助 「あああ!こ・・・これはー!」


   
  
 
ヌル助 「マイマイ!キターーー!!」



マイマイ 「んーー・・・? もう、春かしらぁ?」




   
頭部・前胸の色彩と分布域からすると、どうやら

ミヤママイマイらしい・・・。






ミヤママイマイカブリ
Damaster blaptoides  cyanostola Lewis, 1881




   
いきなり一撃で出たものだから、ここはもしかして

多産ポイントか!?と色めき立ったが、後続は全く

出る気配がない。


とりあえず、マイマイが採れた事をヌルド旦那に伝

えなければならない。


ヌル助 「ヌルド様〜。マイマイが採れました!」

ヌルド 「・・・? あ〜・・・よかったじゃない」

ヌル助 「・・・・・」


いつもと変わらぬクールな受け答えしか返ってこな

いのであった・・・。 しくしくしく・・・; ;




   
ヌルド 「ほじほじ・・・ほじほじ・・・」

ヌル助 「お、良さそうな倒木ですね」

ヌルド 「う〜ん・・・でもコメツキしかいない・・・」

ヌル助 「あはははは・・・そうですか・・・」

ヌルド 「うむ。しかし残念ながら死骸だ。
     これは○▽×◆□●×▲(学名)だな・・・」

ヌル助 「おお〜。コメツキの学名までわかるとは
      さすがは旦那様!」

ヌルド 「ああ・・・一応、『甲虫採遊記』 だからな」





   
あー、それにしても何でこう、崖がないんだろうか?

いくら平地でも、普通だったら(少なくとも南関東で

あれば・・・)少し探せばそれっぽい場所がいくらで

も見つかるだろうに!


やはり、最初に目をつけていた林道あたりに行かな

ければ、難しいのであろうか!?


思わず天を仰ぐ、ヌル助なのであった・・・。




   
そして、目にも眩しい雪原なのであった・・・。 

ああ・・・。




   
このような状況にもかかわらず、とりあえずオサムシ

がいそうな場所を求めて、いろいろと彷徨い歩いたの

であるが、ゴミムシひとつ出てくる気配がない・・・。



ヌル助 「旦那様〜、川に落ちないでくださいよ〜」



すでにテンション下げ下げMAXなのだが、それでも

気を奮い立たせてオサムシを追い求めるも、その姿

は全く見る事ができず・・・。




   
やっと崖っぽい場所を見つけたが、土質があまりに

も悪い。例の石が混ざったふかふか系なのである。


一応、定石通り、木の根元など中心に掘ってみるが

手掛かりが全く掴めない・・・て言うか、虫がいない。



ヌルド 「見事なまでに、完敗 だな・・・」

ヌル助 「・・・左様でございますな」

ヌルド 「なんとなくトラップの方が良さそうだな」

ヌル助 「するてぇ〜と、次来るとすれば初夏とか」

ヌルド 「ああ、そうだな・・・。さて・・・帰ろうか・・・?」

ヌル助 「・・・左様でございますな」




   
敗走・・・。




   
また、いつの日か・・・。




   
リベンジを・・・。







行ったけど行ってない二人の旅は

こうして終わりを告げたのであった・・・。




   




   
      END
 
THE INSECT HUNTER 2011
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