THE INSECT HUNTER
2009
1212
千葉

THE INSECT HUNTER 2009

               
      
今年最後はイヌマキる!
  
 



その「蟻」に良く似たカミキリムシを図鑑で初めて見たのは中学1年の頃だったと思う。

トラカミキリにしては太短くがっしりとした体型と、上翅の渋く上品な模様に心惹かれた。

しかし、一番妙に印象深く感じたのは、その前胸背後部の 「くびれ」であった。


「へぇ〜・・・こんなかっこいいカミキリがいるんだ・・・」

一目惚れである。


さて、どこに行けばこのカミキリと出会えるのか?分布を調べると

「四国、九州、屋久島・・・・かぁ・・・」

関東に住む中学の一年坊主には、おいそれと行ける場所ではなく、それは同時に

そのカミキリが当分、憧れのままの存在となるであろう事を意味していた。



その後、このカミキリがナギやイヌマキといった針葉樹をホストとする事、

日本特産で1属1種、分布も四国・九州といっても南部のごく一部にしかいない事、

発生期も短く、野外で見られる個体数は非常に少ない事などを知り、

そのカミキリは自分の中で、ますますその 「珍品度」 を増していくのであった。



当時の保育社「原色日本昆虫生態図鑑Tカミキリ編」に載っていた写真を

ずっと心に焼き付けたまま、その後もそのカミキリと直接出会う機会は得られず

数十年の時が過ぎ去って行った・・・。



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そして時は流れ・・・・

2008年の秋。 突然とある情報が飛び込んできた。

九州南部から関東に持ち込まれた植木についていた虫が、あろう事か

その植木を食害し、被害を拡大。地元では大問題になっているという。



「えっ!?」

その虫の名前を聞いて驚いた。


ケブカトラカミキリ
Hirticlytus comosus (Matsushita,1941)



それは、中学一年の頃から一度はこの手で採集したいと願っていた

まぎれもない、あのカミキリであった。



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「こ・・・これは・・・!!」

今、すぐにでもその場所へ飛んでいきたかったが、少し心を落ち着かせるよう努力した。

冷静になって考えると、ふといくつかの懸念が湧いてきた。



第一の懸念・・・

まず、意図的ではないにしても人為的な分布拡大(?)によるものである今回のケース

のような場合、その虫自体にわざわざ採集しに行く価値があるのか?という点であった。

基本的に自然と対峙したいスタンスの自分にとって、非常に違和感のある状況である。

この複雑な気持ちを表現するのは難しいのだが、あえて簡易に表現すると

「何か違うんじゃね〜の?」という感じである。


本来なら九州・四国南部までわざわざ採りに行ってこそ価値のある虫と言えるのでは

ないだろうか。では、その価値って何なの?という事であるが、これはアマチュアである

自分からすれば、学術的に自然分布ではないからとかそんな小難しい話ではなく、単に

中学の頃から思い続けたその虫をこんな形であっさりと楽に採らせてもらっていいの?

という、「うへぇ〜!めっそうもねぇ!」的な畏れ・怯えにも似た他人にはとても理解して

もらえない感情に基づく、エラそうに言えばこれも自尊心の一種なのかもしれないが、

要は、九州・四国南部・屋久島で採らなきゃ、ケブカトラじゃねぇ〜よ、という「想い」だ。



しかし、こういった個人的な感情は得てしてその捉え方でどうとでも自由になる一面も

持ち合わせている。つまり、これを本物のケブカトラ採集の本番と思わなければいい。

いつの日か九州や四国の本場で採集する時のための「予行演習」と思えばいいじゃな

いか!そうすれば今回実践した事は必ず役に立つ時が来る!何とポジティブな発想!


これで、第一の懸念はあっさりと解決した(核爆

しかし、まだ問題がある。

第二の懸念は言うまでもなく、「地元の方々への配慮」である。


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今回のケースは、その町に降ってわいた「災難」である。

地元の方々がケブカトラに対して感じているであろう、不安や憤りといった感情を理解

した上で、臨まなくてはならない。まして、ケブカトラがいる場所は、直接的に被害を

被られている方々が所有されている圃場や土地である。その場所に対する特別な思

いは当然の事ながら、そういった場所に他人がズカズカと勝手に入れるわけはなく、

ましてや、被害木を削ったり伐ったりする必要があるため、了解を得た上で行わなけ

れば、当然ながら、不法侵入罪・器物破損に問われるであろう事は想像に難くない。



今回に限った事ではないが採集によるトラブルだけは絶対に避けなくてはならない。



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「今日、市役所から電話があって、地権者の方の承諾が得られたとの事です」



先立って採集許可届を提出していた eichan氏から連絡が来た。

よかった。これでお墨付きとなった。全くeichan氏の真面目さと行動力には頭が下がる。


「ありがとうございます。それでは菓子折り用意しますので。待ち合わせは予定通りで」


地権者の方への心づけも忘れてはならない。得体の知れない我々のような者に対して

快く受け入れを許可していただけたのだから。後はもう、採集準備にとりかかるだけだ。



いよいよ、数十年かかった出会いを果たす時が来た・・・。


   

   
   
待ち合わせの某駐車場では、雨が降りしきっている。

eichanとその相棒のO君も、あと30分ほどで到着する

はずだ。天気予報では晴れて暑くなるって言ってたの

に、この天気と寒さはどうしたわけだ?まあ、採集場所

に到着するまでに止んでくれれば、それでいい。



しっかりと上着と長靴を装備したり、道具を確認してい

るうちに雨も小降りになり、eichanたちも到着した。

場所の確認をして、eichanが運転する車の後ろについ

て行く事にした。

 
 
件のケブカトラは、古くからこの町を代表する樹木で

あるイヌマキに寄生する。どうやら数年前に九州から

持ち込まれた苗にくっついてきて、それがこの数年で

増殖し、被害が広がっているらしい。1属1種という言葉

の響きからは脆弱な生き物を想像してしまうが、実際

にはたくましい生命力を持っているのだろう。この地域

ではもはや完全に「害虫」扱いである。


秋に蛹室内で羽化した成虫はそのまま冬を越し、翌春

4〜5月頃に野外に出る。つまり、ちょうど今の時期は

蛹室内に潜む成虫を探して採集するのが基本となる。


   
eichanの車を追いかけて町中を見ていると、民家の

生垣はそのほぼ全てがイヌマキで、たいてい綺麗に

刈り込まれた立派なものである。他の地域で生垣と

してよく用いられるレッドロビン・モクセイ・ツゲ・ツバキ

などはごく稀にしか使われていないようだ。


まさに、「イヌマキの町」である。


この事がケブカトラにとってどれだけ住み心地の良い

場所であったか想像に難くない。


そうこうしているうちに、最初の採集場所に到着した。

  
  
イヌマキとはこのような樹木である。


昔から造園樹木として使われ、古い庭園などでは庭木

や門被りとしてよく利用されてきた。また畑の防風林と

しても利用され、大きなものでは高さは20mにおよぶ。

針葉樹であるが、マツ類のように葉先は針状ではなく、

一見、針葉樹らしくない。


種子は有毒でイヌマキラクトンといった毒性物質を含

み、樹脂が多く抗蟻性を持つ一般に強健な植物だが、

ケブカトラは進化の中でこれらに対する耐性を獲得し

てきたのであろう。


    
この採集場所でも所々で生垣として利用されていた。


そればかりでなく、庭の主木としても使われており、

この地域とイヌマキとの強いつながりを感じさせるもの

であった。


早速、地権者の方に今回のご挨拶とお礼に伺うと、心

よくその対象となっているイヌマキのある場所に案内

してくださった。


   
さて、この場所で採集許可をいただいたイヌマキは、

被害が確認されて、すでに切り倒された大きな木で、

目通りで150cmはあろうかという巨木であった。


それは、敷地の端っこに寝かされていた。

この木は、自分たちが採集を終えたのち、役所で焼却

処分される事がすでに決まっている。


地権者の方に案内されて、その木を見た瞬間、どこ

から手をつけようかと思い悩むような大きさであった。



※目通り・・・造園用語で地上1.2mの位置の幹周の事

  
 
まず、樹皮が裂けた部分を見ると、ケブカトラ独特の

食痕が見られた。写真でしか見た事がなかったその

特徴ある食痕が、現実に今、目の前にあるのを確認

すると否応もなくケブカトラ採集の実感がわいてくる。



eichanやO君も 「おお・・・おお・・・」と嘆息するばかり

である。感慨にふけってばかりもいられないので、樹

皮を剥がしてみることにした。


この頃になると、雨はあがって時折日も射すように

なってきた。 いよいよ採集開始だ。

  
   
簡単に目につく食痕は、ほとんどが古い食痕であった。

辿っていくと、丸く開いた脱出孔がその先に見られた。


それでは、他の部位も削ってみる事にしよう。


イヌマキは建築材としても利用される事からもわかる

通り強固な材であり、ナタを入れても硬くて少しずつし

か削ることができない。


これは、思ったより苦戦しそうな予感が早くも漂って

きたが、皆それぞれ思い々の部位を削り始めた。

 
  
eich 「お、どうやら蛹室の蓋が見えてきました」


びお 「お、早くもゲットできそうですね!?」


eich 「どれ・・・お、穴が開いた。中に何かいますよ!」


びお 「早くほじり出してみて!」


eich 「う〜ん、黒いのが・・・よし!出た!・・・あれ?」




                     ※右画像by eichan

  
 
びお 「・・・ケブカトラって蟻に似てるって言うけど、
    本当に蟻そっくりですね・・・」


eich 「・・・て言うか、これ正真正銘の蟻だってば・・・」


びお 「・・・・・・・」


eich 「それにしても、一体どこからあの穴に侵入
    したんでしょう??」



これは今もって全く謎のままである・・・。


   
びお 「おっと、こちらは正真正銘の蛹室のようです」


eich 「早く掘りだしてみてください!」


びお 「う〜ん、いじっても動かないな?あれ?」


eich 「・・・頭だけだ」


びお 「くっ!☆個体であったか・・・!」


eich 「はい。 次、すぐ削ってくださいね」


びお 「う〜ん。材が硬くて・・・手ごわいな〜」


 
eich 「ふふ・・・今度は正真正銘、私がGETのようです」


びお 「ふん、どうせ☆個体かなんかでしょう?」


eich 「・・・くっ!ご明察・・・☆個体でした・・・」


びお 「・・・わはははは!ダメじゃん!」


eich 「痛っ!刃物で指切ってしまった!」


びお 「ちょっと!大丈夫ですか?この紙テープ巻いて
    おいた方がいいですよ・・・」



このような二人の壮絶な(?)苦行を尻目に、黙々と

一人で材を削る者がいた・・・。


  
びお 「ちょっと、O君。黙々とやってるけどどうなん?」

eich 「キミ、ナタ持って来なかったのかい?きついね」

びお 「なに?カッターで削ってるの?そりゃダメでしょ」



O君 「・・・いや、採れてますが。何か?」



eich 「・・・・・・え?」

びお 「・・・・・・え?」



  
eich 「わ!採ってるやん!」

びお 「わ!なんじゃ、こりゃぁ〜!」


eich 「ちょっと、その削ってる部分見せて!」

びお 「へぇ〜・・・これがケブカトラ様かぁ・・・」


そこには びおすけが初めて見る、生きたケブカトラの

姿があった。寸詰まりの胴にくびれた前胸を持つそれ

は、まさしく・・・数十年前に図鑑で見たあのカミキリの

姿であった。

それは想像よりも小さかったが、とてもカッコよかった。


  
O君が削っていた場所は、伐採された木の最上部の

部分であった。その食痕の密度たるや凄まじく、今ま

で、びおすけやeichanが削っていた中間から下の太

い部分には見られなかった数である。


びお 「うひゃぁ。すげぇ〜な、コレ!」

eich 「これは、まだまだ出そうですね!」


また、このような状態だとナタでは荒く削ってしまうの

で、O君のカッター大作戦は、的を得た的確な作戦

だったのである。

  
  
気を取り直したeichanとびおすけも再び材に取組み

始めた。


そして、eichanにもやっと虫の神様が微笑んでくれた。

食痕の数自体はそれほどでもないが、割と集中して

いる部位を見つける事に成功した。


eichanはその部位を集中的に削る事で、その後も

続けて数頭のケブカトラを得る事ができたようだ。


やはり、同じ材でも「集虫」する部分があるらしい。

  
 
一方、びおすけはいつもの悪い癖で、最初に目を付け

た部位から離れる事ができず、いつまでも材の下部を

削っていたが、労多くして成果が全く出ない。


見かねたO君が場所を譲ってくれた。しかし、材の上面

はほぼ削られていたため裏側を削りたいのだが、この

大木をひっくり返す事なんてできない。


びお 「いよいよ新型秘密兵器 『ビッグ・ジェイソン』に
    お出まし願う時が来たか・・・」


「ビッグ・ジェイソン」と名付けられたそれは、この日の

ためにわざわざ買っておいたチェーンソーである。

                     ※右画像by eichan


    
びおすけは 「ビッグ・ジェイソン」を車から取りだすと、

おもむろに材にあてがい、安全装置をはずし、トリガー

に指をかけて引き絞った。


「ギュィィィィィィィィィィィィィィィーーーン!!」



「ビッグ・ジェイソン」が目覚めた。

見る見るうちに、ブレードが材に飲み込まれていく。


   
材の先端部を、手で軽く扱える程度の大きさに切り

落とした。こうでもしないと材の裏側を見れないのだ。

びお 「ふぅ〜・・・終わった・・・」

と、同時に「ビッグ・ジェイソン」も電池が切れた・・・。


実はビッグ・ジェイソンは充電式電動ノコギリなので

太い木を切るとバッテリーがいっぺんに空になって

しまうという弱点があったのだ。

しかし、バッテリーはもうひとつ残っている。

これは次の場所で使うために残しておこう・・・。


                     ※右画像by eichan


   
早速、切り落とした材(丸太?)の裏側をチェックする。


食痕をたどっていくと途中に「栓」をした部分があった。

例外もあるが、基本的には材の表面に対して垂直に

坑道を掘り、そこを蛹室とするようだ。


表面を削り取って、息をふっと吹きかけると、そこには

穴がぽっかりと開いていた。


やっと初めて、自分の手によってケブカトラと出会える

のだ。


  
・・・・いた、 ・・・いたよ・・・。


    
そこらに落ちていた先細の細い枯茎で、蛹室内を

コチョコチョとくすぐってやると、気持よかったのか

はたまた気持ち悪かったのか・・・ 自ら外に出よう

ともがきはじめ、見る見るうちにその身を冷たい冬

の外気に晒すのであった。


蛹室から虫体を出すにあたっては、このような方法

で安全に外に出す事ができるので、坑道の削りすぎ

や、ピンセットなどでつまんで、無理矢理に引っ張る

などの行いは、虫体を痛める可能性が高く、おすす

めできない。


    

ついに姿を現したケブカトラカミキリ。



かなり小さな個体ではあるが、それでも初めて自分

の手で採集した個体は格別である。




   
こうして、自ら外に出たケブカトラは、気温が低い事も

あって初めは動きがにぶいが、すぐに元気に動き回る

ので、のんびり眺めていると逃げられてしまう。


すぐに容器などに移す準備をしておくのが賢明だ。



見ると、その触角の先にはまたもうひとつの「栓」

があるではないか。


   
このように「当たり」のゾーンに突入すると、まとめて

蛹室の「栓」が見つかる。


   
穴が開いたら、先の細い物で中をくすぐってやると


    
自分で穴からから脱出してくる・・・。 この繰り返しだ。


材割り出しの採集は、カミキリに限らず、ルリクワガタ

などでもそうだが、作業としては結構地味なものだ。


   
一方、eichanが割り出した、立派な大型個体。


帰宅後、計測すると12mmを超す大物だったという。

体長は一般に8〜10mm程度らしいが、小型個体と

大型個体の見かけのボリューム差は、3倍以上あると

思われる。


また、♂と♀の区別が難しく、明らかに触角が長い

個体は♂だとわかるが、微妙な長さの個体では

その判別は難しい。


体型や腹部の膨らみなどの状態を見てもやはり

わかりにくいカミキリだ。


   
また、図鑑を見ると大抵、トラカミキリ族の項では、

一番最後に出てくる種類である。


これはトラカミキリの中でも一番起源の新しい、

つまり進化した種類だという事なのであろうか?


ナギやマキを好むその食性からは、むしろ古い

起源を持つ虫のようにも思えるのだが・・・。


   
多くは樹皮下を食い進み、材部に坑道を作りながら、

基本的にその材部に蛹室を作るが、樹皮が非常に

厚い場合は、材部よりむしろその樹皮裏を食い進む

ものもある。


   
その場合は、材部ではなく樹皮内に樹皮表面と平行

となる蛹室を作る事がある。

このようなケースの場合、気付かずに削ってしまった

り、捨ててしまったりする可能性があるので気をつけ

なければならない。


   
中には、このように樹皮を剥がしただけで、コロッと

出てくる場合もあるので、注意が必要である。


また、その逆で材部に深い坑道を掘ってそこを蛹室

とする個体もいて、パターンがつかみにくい。


eichanが割り出した大型個体はまさにこのような状態

であったらしく、掘りだすのに苦労されたらしいが、

結果的には苦労した甲斐があったというものである。


もしかしたら、そのような状況にいた個体の方が大型

になるのかもしれない。


    
そろそろ、次の指定場所に向かわなくてはならない。

この場所での採集はタイムアップだ。


O君があの材からケブカトラを得るべく、ラストアタック

をかけたが、残念ながら追加ならず・・・。


丸太の台としているのが、この切り倒されたイヌマキ

の切り株である。


   
eichanが狙いをつけた結果、大型個体を出した部位。


もともと太い枝が出ていたと思われる付け根辺りだ。

枝が切り落とされずに残っていれば、また別の発見

があったかもしれず、少々残念・・・。


そこは食痕が通常の幹周と平行のリング状ではなく、

立木時と同じ、縦方向に走っているという、少し変な

感じのするものであった。


   

結局、このイヌマキの大木からは全部で20頭以上の

ケブカトラを得る事ができたが、予想よりも少なかった

感は拭えない。特に木の裏側はチェックできなかった

ため、見落としもかなりあったかもしれない。


また、出てきたのは全てが成虫であった。


次の採集指定場所に移動するため、後片付けを行い、

地権者の方に挨拶をして、この場を去った。




   
さて、次の採集場所は圃場である。

地権者の方と途中待ち合わせをし、そのまま車で

案内していただいた。今回お世話になった方々は

皆さん親切な方ばかりで、大変ありがたかった。


この圃場には当然イヌマキが多いが、相当数が

ケブカトラの被害にあっており、実は我々が来る

二日前にその駆除のため、くん蒸試験をしたとの

事であった。

つまり、ケブカトラが入っていそうな材は、すでに

駆除されてしまっている・・・・という事になる。


   
そのため、我々もこの場所に来る前から、採集目的

というよりも、ケブカトラの被害と駆除の実態を見学

するつもりで、この圃場を訪れたのであった。


圃場を見渡すと、イヌマキの立ち枯れが点在してお

り、その痛々しい姿をさらしていた。


地権者の方は、「枯木はなんぼ伐ってもかまわない、

伐った木はそこらに置いといてくれればあとで片付け

るから・・・」 とおっしゃってくださるのだが、ケブカトラ

は生木を食害するのであって、枯木はもう出た跡だ

という認識はお持ちではなかったようだ。


   
実際に立ち枯れを観察すると脱出孔がいくつもあり、

すでにもぬけの殻というのが一目でわかる状態で

あった。先ほどの場所の大木の例もあるので、もし

かしたらと思って、立枯れを1本「ビッグ・ジェイソン」

を使って切り倒し、その上部を確認したが、ケブカ

トラがいる気配は無かった。


やはり、まだ生葉のついた「生きている木」でないと

ケブカトラは見つからないに違いない。



   
典型的なイヌマキの被害木である。

このような木を樹皮を剥がしてチェックしたかったの

だが、さすがにまだ生きている木を痛めるわけにも

いかず、表面の観察だけにとどめた。


見ると、やはりケブカトラの侵入した形跡があり、

思ったよりも加害が進んでいるように思えた。


来年の4〜5月に訪れれば、ここではケブカトラの

大運動会が見られるのだろうか?


   
広い圃場の中には、こうした「半分死んでいるような」

イヌマキが多数あるのだが、こうした木をそのままに

しておくと、被害はますます広がるのではと思われた。


eichanやO君もそれぞれ被害木をチェックしているが、

ケブカトラの虫影は確認できないようだ。


やはり、簡単に確認できるような材は全てくん蒸試験

に使われてしまったのだろう。


   
くん蒸試験の順番待ちをしているような伐採木が

山積みになっていたので、一応チェックしてみたが、

食痕は多いものの、その本体は確認できなかった。


しかし、こうも虫影が無いとちょっと不思議な気分に

なってくる。ここまで加害してるのに、その宿主たる

ケブカトラたちは一体どこに身を隠しているのだろう。

  
   
樹皮をめくっていると、時折、小さなクモが出てくる。

このクモの模様が、パッと見がケブカトラ似で、一瞬

ドキッとさせられる。 全くハタ迷惑なクモである。


           
さて、これがくん蒸試験の様子である。


加害された材を集めてビニールでくるみ、薬品で

くん蒸しているのだ。

このビニール袋の中には、きっと多数のケブカトラ

の死骸が転がっているのだろう。

 
    
・・・という事なので、けっこう危険っぽい。

 
   
畑の脇に葉のついたイヌマキ伐採枝が集積されて

いた。目ざとく最初に見つけたeichanはすでに樹皮

下にケブカトラの食痕を確認したようである。

 
   
ケブカトラは意外と細い材(枝)にも侵入するらしい。

ここに集積されている枝の樹皮下にも、少ないながら

も、その食痕を確認する事ができた。


eichanも熱心に探しているが、ケブカトラの姿はなぜ

か確認できないようだ。

 
   
びおすけも一応確認したが、葉がついてるにもかか

わらず、思ったよりも古そうな食痕しか見つからず、

それでももしかしたら入ってるかもしれない、と思い

念のため材を拾っておく事にした。


こうした材の持ち帰りに関しても、役所等に申請済

なので問題はないが、使用後は必ず焼却処分する

約束となっている。

 
  
一応、材も持って帰ったが、どうも古そうな感じがして、

あまり期待はできそうにない・・・。

来年の春に出なければ焼却する予定である・・・。

 
   
・・・というわけで、これでイヌマキ探索は終了した。


思ったよりも数が採れなかったのが残念であった。

もう少し、「害虫駆除」に協力できるかと思っていた

のだが、力およばず・・・といった感じだ。


それでも、長年の夢であったケブカトラをこの手で

採集できたし、被害の状況も実際にこの目で確認

する事ができた。

この経験はいつの日か「本番」の時に必ず役に立つ

に違いない。

そう信じて帰宅の途につく、 びおすけたちであった。

 
  
さて、これで今年の採集記もラストとなりました。


今年も何かと中途半端な結果しか出せませんでした

が、いつもに増してヤル時は真剣にやってたような気

がします。これも年をとったせいでしょうか・・・?


また来年も変わり映えはしないと思いますが、何とぞ

お付き合いいただければ幸いでございます。


どうぞ皆さま、良いお年をお迎えください  <( _  _ )>

 
   
END

   


     
    
 
THE INSECT HUNTER 2009
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