THE INSECT HUNTER
2007
0623
山梨

THE INSECT HUNTER 2007


                 

           
甲州 マタタビ 偲び旅






「ニセハムシハナカミキリ」 というカミキリムシがいる。


山奥にひっそりと咲くマタタビの花に、夕暮れになると訪れるというこの虫。

この虫に対して、びおすけが以前より抱いていたイメージは


「夕方になると線路下の赤提灯に姿を現す、仕事帰りのおやじ」


なぜかわからぬが、そこはかと奥ゆかしく、寂しげで、しかし愛すべきイメージを抱いていた。

昼間活動する進化した優占種に追いやられて、人目を避けるように夕暮れのひと時だけ

こっそりと訪花する、いかにも原始的なこの虫は、地味ながらも びおすけの憧れの虫であった。


また、なぜあえて「マタタビの花」なのか?!

マタタビ自体は山へ行けば、その部分的に白い葉が目立つので、よく見かける植物ではある。

しかし、いまだにその花をちゃんと見た事がないし、当然、掬うという経験をした事がない。


この虫に出会えるのはちょうど今頃の時期。

・・・というわけで、マタタビの主に会いにぶらりと出かける事にした。

猫も酔わすというマタタビ。 びおすけもマタタビの主に会って美酒に酔ってみたい・・・。


    
 
 
其の1



    
目的地に着くとスッキリ晴れていた。

天気予報の週間予報では雨〜曇りであったが、前日

には「晴れ」に変わっていた。で、あるから当然かも

しれないが、実はマタタビの主に会うには曇りくらい

の方が都合が良い。何せ、夕暮れに活動する虫で

あるからして、ギラギラと日光が照りつけてしまって

は出会えるチャンスが少なくなってしまう。
 
  
とにもかくにも、マタタビの主に出会うのは夕方が

本番と考え、それまでの時間はマタタビチェックと

他の虫の採集とで過ごす事にした。

同行の うめちゃんはサルナシチェックでムネモン

ヤツボシを探す。

  
満開のミズキの花が所々に見られるので、試しに

掬ってみる。高所に花があるので掬うのに骨が

折れるが、何度が掬っているとピドニアやらヒナルリ

ハナやらの小さなカミキリがポツポツと網に入る。

ピドニアはニセヨコモンヒメハナが多いようだ。

   
ピドニアは相変らず苦手だが、ここでもニセヨコモン

だかムネアカヨコモンだか判別しかねるような個体

が多かったが、腹側の胸を見てだいたい黒い部分

があるので、大方はニセヨコモンのようである。

   
それ以外ではコゴメウツギくらいしか花が見られず

花の状態の良いものを掬ってまわる。


    
フタオビヒメハナやチャイロヒメハナ、ナガバヒメハナ

といったピドニアに混ざってテツイロハナカミキリや

マツシタトラカミキリなどがポツポツと網に入る。
     

  
一方、マタタビのチェック。

まずは開花していないとお話にならないのだが・・・。

林道を登りながら見ていくと、標高1200mあたりまで

の株には花が見られるものの、それ以上の標高に

なるとまだ 蕾の状態であり、若干フライング気味で

ある事がわかった。

  
マタタビは林縁のわりかし日当たりの良い場所に

多く見られ、その数もけして少なくはない。

葉が部分的に白くなるのは、「花が咲いたよ〜」と

虫達にアピールするため(?)と聞いたことがあるが、

葉が白くなっているにもかかわらず、花が咲いてない

というのはどういうわけだろう?

    

このあたりで多く見られる完全黒化型のツマグロハナカミキリ

  
いたし方ないので、少々車で走って場所を変えて

マタタビチェックを行う事にした。

しかし、結果はやはり同じ。このあたりのマタタビも

まだ開花には至っていない。

花が無いとマタタビの主には会えないであろうから

少々標高が低めであっても、花が咲いている場所へ

戻る事にした。 気分は少々萎え気味である。

  
途中、ガマズミの花などから、ミヤマクロハナや

ツヤケシハナなどの普通種をつまんで喜ぶ・・・。

一方、うめちゃんは幼虫入りのサルナシを見つけた

ようで、一応収穫はあったようだ。

そうこうしているうちに目的のマタタビに辿り着いた。

  

日影にある立派な株で、蔓の長さは10m以上あるのではないだろうか。

夕方までには少々時間があるが、日影にあるこの株であればもしかするといるかもしれない。

しばらく、ここで粘ってみる事にした。

 
花は見事に満開状態。これほど良い状態の株は

他では見られなかった。

期待は高まるのだが・・・。

   
この花がマタタビの主の酒場・・・というわけだ。

じっと見つめていると、この花がなんとなく赤提灯に

見えてきた・・・。

  
1時間・・・2時間・・・と時は過ぎていくが、訪花して

くるのはピドニアばかり。昼間は見られなかった

ツマグロヒメハナが多くなり、日中多数見られた

ニセヨコモンヒメハナが全くいなくなってしまった。


暗くなって葉がよく見えなくなるまで粘ってみたが、

ついぞ、マタタビの主にお目にかかる事はできず。

  
力尽きがっくりして びおすけ号まで戻り、重い長竿

を車のボディに立てかける。やはり、そう甘いもので

はないらしい・・・。 ふと、車のルーフに目をやると

黄色っぽい虫が止まっているではないか。

「マルガタハナか?でも時期が早いような・・・?」


ひょいとつまんで、眼鏡をずらしてよく見ると

  

えっ!?キマルじゃねぇ〜〜か!!

   
ちょうど木々の間から吹き降ろすような場所に車を

止めてあったので、そこから飛来したのであろうか?

これにはさすがの うめちゃんも二の句が告げない

様子であった。 て、言うか一番びっくりしてたのは

びおすけ本人であった事は言うまでもない。

しかし、こんな形で再会しようとは・・・。

  

とりあえず道端のオオバコ(?)の葉とともにケースに入れて持ち帰る。

帰宅してから見ると、驚くことに その葉を齧っていた。

試しにキャベツを与えてみると、これもまた食べてしまった。 

キマル=ヤマシャクヤク という図式が頭にあるが、食性は意外と広範囲に及ぶのかもしれない。
    

  
想定外の収穫があったものの、肝心のマタタビの主

に出会う事ができなかった。この悔しさを温存しつつ

マタタビの開花に合わせて1週間待つ事にした。


次こそ必ず・・・・・!



  
  



 
    
其の2


   
・・・というわけで・・・

同じ場所に日を改めて、性懲りも無くやってきた。

前回見た時はまだ「まずそう」だったクリの花が、

実に「うまそう」な頃合となっている。時間がまだ

早いので、昨日の居残り組しかいないと思うのだ

が、思わず掬わずにはいられない。

   
長竿をめいっぱい伸ばして、掬えるだけ掬って網の

中を確認する。 うひょ〜!何やらごちゃごちゃと

いろいろ入っているぞ。 ちんまいのばっかりだが、

花掬いには、この「賑やかせ」が大事なのだ。

うめちゃんに言わすと、「そんなのゴミ!」なのだが、

びおすけにとっては「お宝の山」に見えるのだ。

   
一番数が多く入るのは、びおすけが勝手に「アテミア

モドキ」と命名しているアオオビナガクチキだ。

二つのタイプ、すなわち、青灰色に黒紋タイプと

濃灰色に無紋タイプの両方が見られる。一見すると

まるで別種のように見えるが、実は同じ種類だ。

   
トゲヒラタハナムグリ
Dasyvalgus tuberculatus (Lewis,1887)

なぜか今まで縁が無く、採集したのは初めてだ。

ルーペでよ〜く見ると、お尻のトゲトゲやら意味不明

の毛束の突起がついていて、カッコイイ虫だ。

 
クリの花では、この他、ツヤケシハナ・キイロトラ・

エグリトラ・チャボハナなどのカミキリが見られた。

案の定、普通種ばかりだが、十分楽しめた。

気分が良くなったところで、早速本来のお題である

「マタタビ探し」を始める。

   
林道を流しながら見ても、「花」自体が少なく、

コゴメウツギ、ノイバラ、サワフタギ、ミズキなどが

見られるものの、花数自体は前回の方が多かった

ような気がする。

サワフタギなど、いかにも虫がたくさん集まりそうな

感じがするのだが、虫影は全く見られない。

時間がまだ早いからかな??

  
掬う花があまり無いので、仕方なくそこいらの草を

スイーピングしながら歩く。 そこそこ掬って網の中

を見ると、モモグロハナがいつの間にか入っていた。

これに少し気を良くして、スイーピングを続ける。

ヘリグロリンゴやホソキリンゴなんかもいないかと

さらに草を掬って歩くが、全然スカであった。

 
先を行くとやっとマタタビの群落が見られ始めた。

前回花を掬ったマタタビはもうすっかり花が終わって

おり、さらに標高をかせいで、開花しているマタタビ

を探す。 本番は夕方と思っているので、一応場所

だけ確認しておこうという算段だ。

 
ちょっと脇道に入ったりして、マタタビを探してみる。

今日も想定外なほど天気が良く、少し歩いただけで

汗が噴き出してくる。

日影に入るとホッとするほど暑いので、このような

状態では、マタタビの主はまだ現れないであろう。

 
いざ、探してみるとマタタビの数は予想以上に多く、

どれも開花している「旬」な状態であった。

が、しかし、喜び勇んで掬ってみるものの、虫の数

自体が前回よりグッと少なく、あれほど多かった

ピドニアすらパラパラと網に入る程度だ。しかし、

個体数は少ないものの、種類数はずいぶん増えた

ように感じる。

 
勇気を持って(?)書いてみると・・・


マツシタ・フトエリマキ・ナガバ・ミワ・ホソガタ・セスジ

キベリクロ・ニセヨコモン・ムネアカヨコモン・チャイロ・

フタオビなどが見られ、逆に前回多かった、オオや

ツマグロが見られなかった。

ニセヨコモンは相変らず多いようだ。

  

花掬いの合間に叩き網などもしてみる。 

クチブトゾウムシの仲間がいくつか得られ、特に右上の種類は

クルミの葉に多く見られたが、実物はペパーミントグリーン色をした

非常に美しいものである。生でお見せできないのが残念。
   

  
左の虫はジョウカイかと思ったがカミキリモドキの

ようである。名前は不明。



右はメスグロベニコメツキ。初めて採集したが、想像

より大きく立派な虫であった。
 

   
キバネナガクチキ

林内の暗い場所の枯木を叩くと、カレキゾウムシ

の仲間と共に落ちてきた。 

小さいが何気に渋い虫である。

  
マタタビを掬っていると、何故かネジロカミキリが

網に入った。「ん?」と思ってよく見ると近くにタラが

あったので納得。この時期でも標高が高ければ、

まだ発生しているようだ。

ネジロマニアのうめちゃんが、これを見逃すはずが

ない。

 
そのすぐ付近で 1本のタラに二桁集まってるのを

うめちゃんが見つけた。他のタラにはいないのに・・。

何かわからないが、ネジロにとって条件の良い木と

いうものが存在するのだろう。

 
うめちゃんが、マタタビの花で採ったというカミキリ

を見せてくれた。容器の中で交尾している。

うめ 「これ、そうじゃないの?」

びお 「いんや・・・。こりゃヒナルリハナだね」

うめ 「それぞれ色が違うよ」

びお 「ヒナルリはいろんな色が出るんだよ」

確かにマタタビの主に似ていなくもないのだが・・。

   
さて、日はまだ高いけど、本腰入れてマタタビの主

を探すことにしよう。


 

採集風景  マタタビを掬う うめちゃん選手

  
  

それじゃ〜自分も・・・。 こんなマタタビを掬ってみる。 かなり日当たりの良い場所だが・・・。


 
何かいることはいるが・・・

ムネアカクロハナ・・・・

 
ああ・・・ピドニア・・・・

 
ああ・・・ハムシダマシ・・・_| ̄|○


段々と しょぼくなっていくな・・・。

 
ああ・・・ ハムシ・・・・


ん?何か違う??

あっ!?まさか?!

 
キターーーー!!

 
びお 「採ったぁぁぁぁぁぁぁ!!」

うめ 「おお!どれどれ見せておくれ」

びお 「ほれほれw」

うめ 「・・・・・・・・・・」

びお 「どう?いい虫でしょ?」

うめ 「・・・ふ〜ん、ヒナルリハナと変わらないね」

びお 「il||li _| ̄|○ il||li 」

   
ニセハムシハナカミキリ
Lemula japonica Tamanuki,1939

マタタビの主にやっと会えたよ・・・。

大きさはアカイロニセハムシハナと同じくらいで

イメージではもう少し大きい虫かと思っていたが

こんなもんなのかな? 憧れだった、紫がかった

チョコレート色の変わった虫・・・。

 
それにしても、こんな暑い日中でも採れることは

採れるんだ・・・。偶然だとは思うけど、やはりあまり

常識にとらわれない方がいいかもしれないなぁ〜と

昆虫採集を続けていると改めて思う。

 
この日、夕方まで探したが結局この1頭きりしか見る

事はできなかった。気づいたのはこの標高での花の

咲いてる木の少なさ。マタタビの数が一番多いが、

他にはサワフタギ・ミズキくらい。結局花が選ぶほど

多くないため一番数の多いマタタビで見られるケース

が多くなる、という事なのではないだろうか。

 
帰り際、びおすけ号のルーフを一応確認したけど、

さすがに今日はキマルの姿はなかった・・・・。
    



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