THE INSECT HUNTER
2007
0609
山梨

THE INSECT HUNTER 2007


                 

              
6月の「F」




何度行っても飽く事の無い場所というのは、そうそう数多くあるものではない。

しかし、「F」は行く度に何かしらサプライズがある。驚きがあり、発見があり、出会いがある。

記憶に深く刻まれる採集。夢をかき立てる採集。僕らが求めるものがそこにはある。

だけど、これと言ったポイントがあるわけでもない。採集者の腕や運や勘が要求される奥の深さ。


そんな「F」は、僕らを魅了し続ける・・・。

そんな「F」に、僕らは今日も旅立つ・・・。


 
今回は6月に同所に何回か出かけた記録をまとめ、
時間経過的には多少前後した「フィクション」仕立てにしてあります。

だけど採集内容はもちろん 「ノンフィクション」ですよ!

  
 
 
それにしてもこの時期、こんなに花が咲いていると
は知らなかった。

思えば盛夏や初秋にしか来てないので、気づくはず
も無い。

一応、狙ってる虫もいることはいるのだが。
さて・・・叩くか?・・・・掬うか?

・・・叩く?掬う?叩く?・・・・・・・・・・う〜ん。


せっかくだから掬ってみよう!
 
  

わりと標高低めで満開なのがミヤマザクラ。

枝先に小さな総状の花がちらほらついているだけなので

一見頼りなさげだけど、上空を見上げると小さな虫たちが群がって飛んでいる。

   
早速、掬ってみよう。

   
まず手始めに採れたのは ニセハムシハナ系。

ピック・アカイロ・キバネの3種で、アカイロの個体数

が一番多かった。


その他「毎度の」ヒナルリハナカミキリも当然ながら

多く見られる。

   

右:ピックニセハムシハナカミキリ(通常サイズ)
  Lemula rufithorax Pic,1901

左:アカイロニセハムシハナカミキリ(ミニサイズ)
  Lemula nishimurai Seki,1944


アカイロは通常、ピックよりも体が大きいけれど、この

ような個体も見られる。

見分けるには、体色と口器まわりの色を見るのが

良さそうだ。

      

    
続いて何頭か採れたのは・・・

オダヒゲナガコバネカミキリ
Glaphyra gracilis (Hayashi,1949)

右:♀ 左:♂

ヒゲナガコバネ系はかなり好きなので、採集できる
とすごく嬉しい。周辺はホストのモミ等が多いので
きっと個体数も多いのだろう。

kojimaiに似てるけど、体がかなり小さくて且つ細い。

両種を比べると華奢なkojimaiですら立派に見える。
     

  

何度か掬って、「綺麗系」のカミキリがネットイン! 


ヘリグロアオカミキリ
Saperda (Saperda) interrupta Gebler,1825

名前とは違い、新鮮な個体は体色が鮮やかな黄色をしている。もちろん個体差もあるだろうけど。

   

別の樹に咲く花も探してみる。

これも一見しょぼしょぼした感じの花だが、緑一色の背景に白い花が目立つ ウラジロノキ。

あまり虫は飛んでない感じだけど、とにかく掬ってみよう。

 
で、ネットインするのはこればかり・・・。

カラカネハナカミキリ
Gaurotes (Paragaurotes) doris Bates,1884

通称「ドリス」。

普通種で個体数は多いけど、びおすけ好みの虫で、

特にこの一帯のドリスは面白い。

  
右:腿節と脛節に黄色が入り、腹部も黄色いタイプ

左:腿節も脛節も黒くて、腹部も黒いブラックタイプ

中:その中間タイプ

特にブラックタイプは他の地域では見られないよう

なので貴重だ。

    

少量の「ドリス」でウラジロノキは打ち止め。 次に狙いをつけたのは アズキナシ。

これも複散房状の白い小花が集合した感じで、虫がいかにも好みそうな花だ。

  
いざ、鼻息を荒くしながら 掬ってみると・・・。

さあ、たいへん! こちら 「ドリス」が大爆発!

一回掬う度に10〜20頭の「ドリス」がネットイン!

「ぬお〜〜!!」

興奮しながら、主にブラックタイプを選んでつまむ。


しかし・・・さすがにしばらくすると飽きてきた・・・。

  
ちょうどその時、またヘリグロアオをネットイン!

続いてもう1頭!

盛夏に見られる摩れた「ヘリグロクロ」個体に比べて

発生初期の個体はやはり綺麗だ。

それにしてもこれを「ヘリグロアオ」と呼ぶのも何だか

おかしい気もする・・・。

 
アズキナシの花では他に

オオヒメハナカミキリ
Pidonia (Pidonia) grallatrix (Bates,1884)

が採れたくらい・・・。

この比較的大型なPidoniaを見ると、何故か

「ああ・・・今年もシーズンに突入したんだな〜」
と実感するのだ?!

では、せっかくだから他のPidoniaも探してみよう。

  

日影に生えている オオミヤマガマズミ。

いかにもPidoniaが好きそうな雰囲気だ。

 
掬ってみて最初に入るのはやっぱりコレ?!

ナガバヒメハナカミキリ
Pidonia (Pidonia) signifera (Bates,1884)

どこでも個体数が多い優占種だけど、場所によって
形態に微妙な違いがある気がするので、どこで採れ
もしっかりとゲットする。

若干、体色が薄めの個体も採れたけど・・??

   
少ないながら

キベリクロヒメハナカミキリ
Pidonia (Pidonia) discoidalis Pic,1901

もネットイン。


Pidoniaにしては体ががっしりとして色も綺麗だし

なかなか魅力的な種類だ。写真は♀。

  
後で採れたナガバヒメハナを見ていると、体色が
薄めの個体?と思っていたのは、なんとこの一帯
だけに特産の

トウカイヒメハナカミキリ
Pidonia (Pidona) tsuyukii Kuboki,1994 (画像左)

※Pidonia (Pidonia) chairo Tamanuki?(画像左)
※P.(P.) himehana S.SAITO,1992(画像左)
であった。もちろん初採集だ。

こういう事があるからPidoniaはあなどれないのだ。

右画像はキベリクロヒメハナの♀。


他にはチャイロヒメハナ・フタオビノミハナといった
Pidoniaが採集できた。

※暫定的にP.chairoとさせていただきます(6/11)
※P.chairoは紀伊半島特産という事で、暫定的に
  P.himehana といたします

  

   
さて、ここでいきなり視点を変えて 通称「プテロ」と呼ばれるナガゴミムシの仲間を探してみる。

オサムシと同じく飛翔能力が無いので、各地域で種の分化が進んでいる調べ甲斐のある虫だ。

また、その魅力はゴミムシとしては比較的大型で、たくましさを感じる漆黒のボディ(例外あり)や、

ニッコウオオズなどに代表される珍奇でアンバランスな形態にある事も見逃せない。

ただ、種の同定は難しく びおすけのようなシロウトが手を出してよいものか?とは思うのだが・・・。

でも、まあいいか。とりあえずカッコイイ!虫なので、難しい事は考えずに狙っていこうと思う。

   
ちゃんと採るとなれば、トラップやらをいくつも仕掛け、

しっかり準備して採集にのぞむのだろうけど・・・

びおすけにはそんな根性はまるで無い!(キッパリ

よって、もっとお手軽に探す方法、つまり道路脇の

側溝に落ちたものを拾う手段におよんだ。

  
とりあえず、どこでもいいから側溝の落ち葉の溜まった場所などを棒でひっかきまわして歩く。

側溝の所々にみられるそういった場所には、ミミズ・ヤスデなど超外道ばかりが多く、他のゴミムシや

ハネカクシなどが見つかれば、まだいい方である。

また、落ち葉や土・石などがあまり多く堆積してると、しょぼい棒では歯が立たず、それこそスコップなど

が必要になってくる。実際やってみると単調でつまらないくせに体力が要る作業だ。

何ヶ所か探してみたが、狙いの虫は全く姿が見えない・・・。



と・・・、あきらめ気分でそろそろやめようかと考えていた時、突然そいつは姿を現した!!

   

側溝の隅にちんまりと黒い影、キターーーー!! 体格がよく、どう見ても「プテロ」だ!!
 

   
「うりゃっ!」

とばかりにつまみあげると、光る漆黒のボディが!

「プテロ」。ついにゲットである。

採れた付近の側溝をさらに探して、やっとこ4頭の

プテロを得た。

   
あいや〜・・・かっこええなぁ〜・・・。

何なんでしょうね、このそこはかとなく感じられる

この魅力は・・・・。



何やら他のゴミムシには無い「気品」すら感じられる。

  
あああ・・・どの角度から見ても飽きないよ・・・・。

  
同じ場所で採れたから当たり前かもしれないけど

みんな同じ種類のようだ。

さて、ここからが問題。やっかいな同定です・・・。



一体、何ナガゴミなんでしょうか!?


  
腹端の突起の形状や・・・・・

   
交尾器の形状などを見て・・・・

カタシナ katashinensis か、ベーツ asymmetricus
か迷ったのですが、ベーツほど腹端が湾入しない、
前胸背の横皺などから、暫定ですが

カタシナナガゴミムシ
Pterostichus (Nialoe) katashinensis,
Habu,1958

としておきます。

(某コミュサイトではベーツとしてました。訂正して
 お詫びいたします)

   

   
さて、プテロの問題も片付いて(えっ!?)、またカミキリ採集に戻る事にする。

前半戦は花掬いであったので、今度は叩きにしてみようと思う。

ところが昨年と打って変わって、叩きたくなる倒木や枯枝が少ない。

仕方ないので立木の枯れた下枝を中心に叩いてまわる事にした。

モンタナスは無理でも、シロオビドイくらいは採れるだろう。

ちまちまとアッチを叩き、コッチを叩きしていると、ポツポツとシロオビドイが落ちてくる。

「う〜〜ん、相変らず白くて綺麗ですね〜」 などとつぶやきながら続けていると
  

 
  

「あれっ?白くない・・・」

モミの枯れた下枝から落ちた、その暗褐色の個体は見るからに「シロオビドイ」ではなく「ドイ」だ。

白くてドイっぽいのは何回か見ているが、いかにもドイな個体は初めて見た。

この周辺の「ドイ系」は、ほんとにわからない事ばかりだ。
 

    
今回採れた3タイプ(?)

右:シロオビドイカミキリ

左:ドイカミキリ

中:中間的なタイプ

この周辺のドリスやハススジハナのように色や模様

が異なるが、同一種の範疇に入るものなのか??

全く、奥が深い・・・・。

 
さて、わけがわからなくなったので、気を取り直して

花掬いに戻る事にした。

下を見ながら歩いていて、ふと目線をやると

「おお!ヤマシャクヤクじゃん!」

これはもしかしてキマルも・・・と思ったが、現実は

そう甘いものではなかった。でも可能性は・・・。

    

今度は上を見ながら歩いていると、思ったよりもミヤマザクラの数が多い事に気づく。

今日の締めに、もういっちょ掬って帰るか〜。背中に背負った長竿を取り、するすると伸ばしていく。


   
掬ってネットの中を確認すると、いるのは
シロトラ・ニセハムシ系・ヒナルリハナなど・・・。

触手が伸びる獲物が入らない。

しばらく続けていると、クロニセリンゴがネットイン!
やっとそれっぽいのが採れて、ちょっとにんまり。

もう少しやってみるか?
竿を伸ばして、枝先の花を掬い、手元にするすると
戻してくる。

どれどれ?次はどうかなぁ〜・・・?

   
    

「あ!ヨコヤマさま!」 

思いもしなかった生涯2度目の成虫野外採集。

びおすけの大好物。

ヨコヤマトラカミキリ
 Epiclytus yokoyamai (Kano,1933)

 


・・・・・「F」では、いつも何かが起こる・・・・

・・・・そんな「F」に、僕らは今日も通い続ける・・・・


END
    



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